サラリーマンが自称・小説家を名乗るための手帳・メモ術─第1回─【天使の街・創作メモ】

ワーク・ライフバランスで小説を人生に組み込む

これから数回にわたり、自称・小説家でありサラリーマンある私が、ベストセラーのノウハウを頂戴しながら、小説を書くための方法をご紹介してきます。その第1回目として、株式会社ワーク・ライフバランスの社長である小室淑恵さんの理論と実践のしかたを解説していきます。

小室理論のエッセンスは以下の3点に要約できます。

  1. ワーク(仕事)の単位時間あたりのアウトプットを増やす
  2. ライフ(私生活)でインプットし、ワーク(仕事)のアウトプットを増やす
  3. ワーク(仕事)、ライフ(私生活)、好きなこと(趣味など)の3本柱を持つ

これらを順番に見ていきながら、自称・小説家としてどう実践していくかを考えていきましょう。

この記事はぎゃふん工房の作品レビューから移植したものです。

1.ワーク(仕事)の単位時間あたりのアウトプットを増やす

私たちサラリーマンは、大掛かりな仕事、ヘビーなプロジェクトを前にすると、「しばらくは終電までがんばる日々が続くな」「何日かは徹夜をするしかないな」「休日出勤もしないとな」と考えてしまいがちです。自分ではそう思わなくても、チームのリーダーや上司からそんなふうに言い渡されることもあるかもしれません(法的な問題は別にして)。

小室理論は、まずその発想から否定します。

とはいえ、「そんなこと言ったって、現実問題としてこなすべき仕事の量が膨大なのだから、仕方ない」「だいたい会社が悪いんだ。適切に人員を配置していないから」などという不満を漏らしたくもなるでしょう。

少し前のエントリーでも触れたように、「残業」「休日出勤」は自分のスキルアップによって、かなりの程度、回避することができます。

「ワーク・ライフバランス」というと、「のほほんと仕事をして、定時に帰ること」というイメージがあるかもしれません。しかし、少なくとも小室理論ではちがいます。むしろ逆で、極端に言えば「どんな仕事も定時までに終わらせなければならない」「それができないようなスキルの低い人材は不要」というシビアな話なのです。

このことを理解するために、会社の立場に立って考えてみてください。残業代など割増の賃金は、その人の「スキルの低さ」にコストを払っているのと同じです(もっともサービス残業として、賃金が出ない場合も多々ありそうですが、それはまた別問題)。日本人の給料は高いので、会社としては時間さえかければ誰でもできるような仕事は、賃金の安い外国人に外注するようになるわけです。そのことの是非はともかく、これから時代は確実にそう流れていくでしょう。

この理論を自称・小説家として敷延すれば、「仕事は何がなんでも定時に終らせ、創作の時間を確保する」ということになります。

では、どうすればそれが可能か? さまざまな方法があると思いますが、次回ご紹介する野口悠紀雄先生の「時間を最適化する方法」のところであらためて考えたいと思います。

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2.ライフ(私生活)でインプットし、ワーク(仕事)のアウトプットを増やす

これはどういうことでしょう? 小室さんの挙げている例はこうです。とある企画が何度提出しても通らない。そんなある日、自宅でなにげなく手に取った雑誌から着想を得て、それを盛り込んで再提出したら、見事採用された、というものです。

われわれが従事している仕事というのは、なんらかの形で人々の「私生活」につながっており、みずからの「私生活」に仕事のヒントは眠っているということでしょう。逆に、実体験にもとづいていない商品・サービスは生き残れないということでもあると思います。

これはいわば仕事の〈質〉の話ですが、〈量〉の問題にもこの考えかたは関わっていきます。

私自身の卑近な例を挙げましょう。とある作業を行なう際、ふつうの人がExcelを使うところで私はFileMakerを用いています。これによって、能率が変わってくるからです。では、FileMakerの使い方をどうやってマスターしたのか? 会社の先輩から教わったのか? ちがいます。自宅で家計管理にFileMakerを使っているのです。そこで覚えたノウハウを会社の仕事に応用しているわけです。

このように、「ライフのインプット」の話は、1の「単位時間あたりのアウトプット」にもつながっていくわけです。

さて、自称・小説家としてここまでの話を咀嚼するとどうなるでしょう?

ライフ(私生活)のインプットによって、ワーク(仕事)のアウトプットの〈質〉と〈量〉が上がるのだから、ワークにかける物理的な時間は短縮され、その分、小説執筆や構想の時間が確保できるでしょう。

さらに、話を発展させて、ワークにおけるインプットが「小説のアウトプット」に役立つのではないか、と思っています。

これも私の例を挙げましょう。いま制作中の小説に、「高級ホテルのスイートルームのような部屋」というのが出てきます。宿泊客としては一生縁のないところかもしれませんが、幸運にも仕事で訪れることができた。だから、その経験を小説に生かそうと思ったわけです。私の場合は、やや特殊かもしれませんが──いや、誰でも人生は「特殊」なのだから、小説に使える素材は、ワーク(仕事)のなかにも眠っているはずなのです。

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3.ワーク(仕事)、ライフ(私生活)、好きなこと(趣味など)の3本柱を持つ

「家庭を顧みず仕事に邁進する」という働きかたが称揚されたのは、それほど昔のことではないでしょう。社会の状況がそれを許していた(そのほうが合理的だった)時代であったからで、これからはそんな考えた方は通用しない、というのが小室理論です。

その理由は、上記の1や2で述べたとおりですが、そのほかに小室さんが挙げているのが「そういう働きかたはメンタル面に悪影響を及ぼす」ということです。

仕事のことばかり考えていて、もしうまくいかないことがあったら、一気にダメになってしまいます。家庭を顧みない働きかたをしていれば、奥さんや子どもに愛想をつかされ、自宅にも居場所がないかもしれません。

会社以外に、自分の居場所、自分を評価してくれるところを作っておくと、かりに仕事がうまくいかなくなっても、軸足をほかに移すことで人生を建て直せるし、そうすれば、仕事のほうも持ち直していくかもしれないのです。

この「居場所」は、「仕事(会社)」「家庭」のほかに、もうひとつ「趣味(自分好きなこと)」を加えた〈三本柱〉にしておくのがよい、とされています。

これは個人的にも非常に実感できることです。つまり、仕事の悩みというのは、労働時間外にごちゃごちゃ考えるから負のスパイラルに陥るのであって、仕事のことを考えるのは、会社だけにすれば解決することも多いのです。会社に出勤すると、心が“戦闘態勢”になり、ちょっとぐらいの問題ははねつけることができます。ところが、“武装”を解除している私生活で仕事のことを考えようとすると、無防備な心が攻撃にさらされてしまい、よけいなダメージを受けてしまうのです。

自称・小説家ならば、私生活で仕事のことは一切考えない。そんな暇があったら、とにかく手を動かす。小説の本文を書き進め、着想をメモする。その行為自体が、上で述べたように、仕事で取り組む商品やサービスにもつながるかもしれないのです。

家庭を持っている人なら、「仕事」「家庭」「小説」の盤石な〈三本柱〉ができるでしょう。独身の人は、「仕事」「小説」以外のなにか(たとえばボランティア活動など)を持っておくのがベストですが、「仕事」の比重が多くならなければよいので、「仕事」と「小説」のバランスをうまく保てばよいでしょう。

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小説を書くことがあなたに幸福をもたらすように

なんのために小説を書くのか──「人はなんのために生きるのか」というのと同じくらい難しい問いかけです。一生、答えは出せないかもしれません。でも、少なくとも、なんらかのかたちでみずからの〈幸福追求〉につながるから、ということは言えるでしょう。小説を書くことで家庭が崩壊したり、借金をしたりするようでは本末転倒、なにがなにやらわからない。

今回のエントリーは、小説を書くことがあなたに幸福をもらすために、少しでも参考になれば幸いです。

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