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マヨ │ 大学生

学生時代は
愛にあふれた人!?

マヨは麗宝学園高等部国語科の教師。『天使の街〜マヨ〜』の物語はマヨの女子大生時代から始まる。ナツミという名の女と出会ったことで、マヨの運命が大きく歪んでいく。

マヨは麗宝学園高等部国語科の教師。『天使の街〜マヨ〜』の物語はマヨの女子大生時代から始まる。ナツミという名の女と出会ったことで、マヨの運命が大きく歪んでいく。

マヨ先生は、私立れいほう学園高等部・国語科の教師です。といってもまだまだ新米ですから、学生だったのはほんの数年前。だから、見た目はそれほど変わらず、やっぱりそのころから美人といえます……ま、それはイラストを見ればわかるか。

「盆おどりのルーツって知ってる?」

「ルーツ……? 先祖の霊を迎える儀式とか?」

「盆おどりはね、もともと恋人を見つけるためのイベントなの。現代でたとえるとお見合いダンスパーティーみたいなものかな」

──え……そんなロマンチックなものなの?

「マヨさんみたいに可愛い人は、ひくてあまたになるんじゃない?」

フユミさんの手が私の肩に置かれる。そのまま優しく滑るように、指が私の二の腕へ移動する。そっと撫でてから、ゆっくりと手を離した。

思わず身震いする。心地よさを感じてしまった自分に驚いた。

「え? そんな……。そんなことありません……」取り繕うように答えた。

その言葉は本心だった。私はいつも片想い。相手が振りむいてくれることなんてない。

ここでマヨさんは「私はいつも片想い」と言っていますが、そんなことってあるのでしょうか。美人で性格もいい人なのに。実際、ナツミさんもこんなふうに言っています。

「マヨ……」ナツミが私から視線をはずし、前を向きながら話しはじめた。「あのね、お姉ちゃんがマヨの体にさわって、その気にさせたのは、可能性があるからだよ。いろんな人がマヨのことを好きになると思ったから、えっちな気持ちを引き出そうとしたの。お姉ちゃんとはあまりうまくいってないけど、他人を見る目はたしかだよ。こう言ったらアレだけど、マヨがまったくモテなさそうな、さえない女の人だったら、お姉ちゃんはなにもしなかったはず。わたしも初めて見たときに思ったもの。『あ、この人は愛にあふれている人。そして、その愛を他人に分けてあげられる人だ』って」

もしかすると、マヨさんは自己評価が極端に低いのかも。もっと自信を持てば、よい結果が得られそうなのですが。だから、こんな言葉にも騙されてしまいます。

「『同時に複数の人を愛してはいけない』。そんな世界は息苦しい。あなたが生きているのはそういう世界。あなたを悩ませているのは、いつの間にかつくられていた決まりごと。でも、自分のふたりの子どもとおなじように、たくさんの人をまったく平等に愛することができる。そんな世界があるとしたら、マヨさんは行きたいと思う?」

もっとも、マヨさんが幸せになっていれば、『天使の街』の物語は成り立たないのですから、マヨさんの不運に私たちは感謝するべきかもしれません(そんなこと言うと、怒られそうですけど)。

ミライさんに聞いてみよう

──マヨさんの学生時代について麗宝学園の生徒さんに聞くわけにはいきません。そこで特別にミライさんにお越しいただきました。

ミライ よろしくお願いします。

──ミライさんは小説に出てくる謎の組織の方ですよね?

ミライ はい。謎の組織の人です。〈でもんず〉っていう〈テンシ〉退治を専門としている人たちの集まりです。

──マヨさんもそこに属していた?

ミライ はい。ちょうどわたしが〈でもんず〉に初めて参加した日と、マヨさんの活動初日が同じ日だったんです。

──マヨさんの第一印象はいかがでした?

ミライ とにかく綺麗な人だと思いました。ただ、そのときいっしょだったナツミさんやコユキさんも美しい方たちなので、マヨさんに関しては、見た目よりも、性格的な部分が印象に残っていますね。

──どういうことでしょう?

ミライ わたしと同じように〈テンシ〉と戦うのは初めてのはずなのに、全然動じてないんです。

「あのぉ、ちょっと失礼して、シャワーを浴びてきて、よいかしらん?」奥さんが立ちあがる。「あなたたちは、ゆっくりしていって」

奥さんが出ていくと、部屋のなかの雰囲気が一変した。

ナツミとコユキさんの表情が強張っているのがわかった。ふたりの間に緊張が走っている。

「出るな……」コユキさんが深刻な面持ちで口を開く。「お風呂場っていうのが、一番〈テンシ〉が出やすい。髪が濡れるから」

「じゃあ、念のため、わたしたちも──」ナツミがそう言いかけた瞬間──。

きゃあああああああああああ。

女の悲鳴。館のどこかで発せられたようで、くぐもっている。

ナツミがドアのほうへ走る。コユキさんがそれに続く。

私もあとを追うとしたけど、ミライちゃんが立ち尽くしたまま、呆然としているのが見えて、足を止めた。

ゆっくりミライちゃんに近づき、両肩に手をかける。

ミライちゃんが私へ顔を向けた。恐怖のためか、目が潤んでいるのがわかった。

「行こう? 大丈夫だから」

──ここでミライさんは泣きそうになってますね。そのくらい怖かった、と。

ミライ はあ……わたしも初々しかったですね。このときはまだ高2だったんです。

──マヨさんはミライさんのことを気にかける余裕がありますね。

ミライ そうなんです。あとで学校の先生になったって聞いて納得しました。

──ただ、正確にはマヨさんは〈テンシ〉に遭遇するのは初めてじゃないんですよね。郡上八幡で襲われていますから。

ミライ はい。このときもその話が出たと思います。

「もうっ! なにしてんのっ! 危ないところだったんだからっ! ちゃんと戦ってよ!」

ナツミは涙声になりながら、叫んでいた。

「ごめん……」消えいるような声で、なんとか私は答えた。

「まあ、まあ。マヨちゃんも初めてだったんだし」

コユキさんがそばに来ていた。顔が蒼白になったミライちゃんの姿も見える。

「初めてじゃないっ! もう何度も〈テンシ〉に出会ってるんだからっ」

ナツミがこれほどまで取り乱すとは驚いた。

──この場面のナツミさん、ちょっと怖いですね。

ミライ はい。ふだんは優しいナツミさんが感情的になったので、わたしもびっくりしました。まあ、その理由はなんとなくわかっちゃいましたけど。

──本日はありがとうございました。〈でもんず〉のことは別ページで取り上げています。

ミライ まったく謎の組織じゃなくなっちゃいますけど、いいんでしょうか?

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