でもんず

バケモノ退治は
〈でもんず〉に
おまかせ!

〈テンシ〉退治を目的とした謎の組織。メンバーは若い女性が多いようだ。水鉄砲を手に〈テンシ〉と戦う。そこから発射される液体で敵を怯ませることができるらしい。

〈テンシ〉退治を目的とした謎の組織。メンバーは若い女性が多いようだ。水鉄砲を手に〈テンシ〉と戦う。そこから発射される液体で敵を怯ませることができるらしい。

そもそも〈でもんず〉とはなんなのでしょう? まずは初登場シーンから見てみましょう。

きゃあああああああああああああああああああああ。

バケモノの悲鳴が部屋中に響きわたった。

「なに!? あんたたち!」キヨコさんが怒号に似た声をあげる。

〈テンシ〉の姿が消えていた。

部屋のなかに、数人が流れこんできていた。

奇妙な格好をしている。全身が赤ずくめ。フードのようなものを被り、顔は見えない。

ひとりが手にしていた道具から白い塊が飛んだ。

塊が宙を舞い、部屋のどこかに衝突して、ボムという鈍い音を立てた。

音のしたほうに目をやると、〈テンシ〉の姿があった。

別の塊がそいつにあたった。

きゃあああああああああ。

〈テンシ〉が苦しみ、悲鳴をあげている──ように見えた。

バケモノは四つん這いの格好で、窓のほうへすばやく移動した。

窓にはぶつからずに、すり抜けた。

そのまま白い不気味な女は消えた。

「おねえさん、大丈夫? 聞こえる?」

赤ずくめのひとりが私のそばへ近づいていた。

口元はかろうじて見えるけど、顔の上半分が隠れていて表情はよく見えない。

声と口元の感じから、若い女性だとわかった。

「はい……」私はなんとか声を出した。

「よかった。間にあったんだね」

テンシ〉に襲われそうになったマヨさんを救ったのが〈でもんず〉の人たちでした。彼女たちが持っていた道具から「白い塊」が発射され、〈テンシ〉を追い払うことに成功しています。

つまり、〈テンシ〉の撃退を目的として活動しているのが、この〈でもんず〉というわけです。

ところで、このときマヨさんのもとに現れた〈でもんず〉は、顔が隠れていました。中身はいったいどんな人たちなのでしょう。

エレベーターの扉が開き、人が出てきた。

3人。

いずれも20代と思われる若い女性だった。赤いレインコートは着ていない。ひとりはOLのスーツ姿。あとのふたりはカジュアルな服。

赤いコスチュームの中身は、いたってふつうの若い女性のようです。

さて、そんなバケモノ退治に、行きがかり上、マヨ先生も参加することになります。はじめて〈でもんず〉の衣装を着た先生の感想は──。

基本的にはちょっと厚手のレインコートという感じ。そう考えると、色が真っ赤で派手すぎるものの、なかなかオシャレと言えなくもない。

──だそうです。

それにしても、なぜ〈でもんず〉はこんな格好をしているのでしょう?

コスチュームを装着しおわると、なんだか楽しい気分になってきた。

私はそんな趣味はないけど、コスプレをしているような──いや、これはコスプレそのものか──ふだんとはちがう自分になった気がした。

気恥ずかしさも見事に消えている。〈テンシ〉退治のばかばかしさをやわらげる。こんな衣装を着るのはそれが目的かも。

〈でもんず〉は「謎の組織」でありますが、なかなかつかみどころがない存在ではあります。

『こちら本部。状況を報告せよ』

スピーカーから声が聞こえた。〈でもんず〉たちが持つトランシーバーかなにかから鳴っているようだ。

「たったいま完了した」ひとりが応じる。

『犠牲者は?』

「ひとり。高校生。すでにそちらに運んでいる」

『了解』

こんなふうにまるで軍隊のようなふるまいも見られます。ますます謎が深まります。

マヨ先生とミライさんに聞いてみよう

──わからないことは、実際に〈でもんず〉の人たちに聞いてみればよかろうなのだ。

マヨ 正直いっちゃうと、私は自分のこと〈でもんず〉の正式メンバーだと思ってないんだよね。

──え? そうなんですか?

〈でもんず〉に、大学のサークルみたいなノリで参加していたけど、ほんとはもっと真面目な組織なのではないかと思えてきた。

マヨ ほら……ここにあるように、私は軽いノリで参加していて、そのおかげでひどいめにあっちゃって……。

ミライ でも、別に資格試験があるわけではないし、わたしはマヨさんは立派な〈でもんず〉の一員だと思ってますよ。

──ところで、上のイラストでは拳銃のようなものを持っていますね。こんなの日本で許されるんですか?

マヨ もちろん。だって、これ水鉄砲だもの。

──え!?

ミライ このなかに〈テンシ〉を追い払うための液体が入ってるんです。っていうより、たぶん本物の銃を撃ってもダメだと思う、〈テンシ〉は……。

「敵を探すときは、トリガーに指をかけて、いつでも撃てるようにして」ナツミはそう言いながら、テレビドラマの刑事がやるように、両手に持った銃を胸のあたりに持ってくるしぐさをした。

「バケモノは、天井にいることが多い。だから、視線は上に向けること」

「あの……〈テンシ〉を見つけたら、どうすればいいんですか?」ミライちゃんがかすれるような小さい声でたずねる。

「もちろん、この銃で攻撃して。このなかには、塩を溶かした水が入ってる。標的にあたれば、ひるませることができるから」

──〈テンシ〉のページで、敵を倒すには塩をぶつければいいと教えていただきました。つまり、水鉄砲のなかに塩水が入っているわけですね。

マヨ そういうこと。塩そのものをババッとぶつけるより、飛距離も出るし、当てやすいからね。

──あと、〈でもんず〉っていう名前は、〈天使〉に対抗するもの、つまり〈悪魔(demon)〉から来ているんですよね?

マヨ う〜ん……私もずっとそう思ってたんだけど、別の説もあって……。

ミライ 以前、マヨさんと話していてその話題になったんですけど、『デモンズ』っていう映画があるんです。ご存知?

──もちろん。いちおうここはホラー小説のサイトですから。ダリオ・アルジェントっていうイタリアの有名なホラー監督の作品ですね(ただし、この映画では監督ではなく製作)。

マヨ そこからとったのではないかと思うんだけど……でも、ナツミがそんな映画知ってるわけないしなあ……。

──コスチュームが赤いのは、キリスト教で「赤」は「悪魔の色」って言われているからですか?

マヨ たぶん、ちがうと思う。

──へ?

マヨ ナツミの好きな色が赤なんだ。

振りむくと、ナツミが立っていた。

薄い黄色を基調とした浴衣。下駄の赤い鼻緒が絶妙なアクセントになっている。手には小さい団扇を持ち、ヒラヒラと動かしている。風を送っているのではなく、形式的にあおいでいるようなしぐさだ。

玄関のところまでやってくると、イスに腰かけ、本を読んでいる人がいた。

ナツミだ。ブックカバーの赤色が目に飛びこんでくる。

ミライ ほら。ナツミさんの着ている服を見ると、あちこちに〈赤〉があしらってありますよね。

マヨ そう……どこかワンポイントで入れるのが好きみたい。

──〈でもんず〉の衣装はワンポイントじゃなくて全身が真っ赤だけど……。

ミライ あら? マヨさんの前でナツミさんの悪口はダメですよ。

──いや、別に悪口では……。話題を変えましょう。ミライさんは、どうして〈でもんず〉に?

ミライ わたしは小さいころから霊感が強くて、いろいろ興味を持って調べているうちに、ナツミさんから〈でもんず〉のことを教えてもらって……。

──へ〜、ミライさんはそっち系の人なんですか? つまり「見える」人。なんかホラーっぽくなってきました。

マヨ 『心霊学園ホラー』ってこと忘れてない?

ミライ ほら。今もあなたのうしろに……。

──やめてください。

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