マヒル │ 麗宝学園3年生

マヒルは学校中が憧れる
スーパー女子高生!

私立麗宝学園高等部3年生(18歳)。心霊研究クラブ〈SDK〉の部長。容姿端麗、才色兼備のスーパー女子高生といった感じ。ハルカとヤヨイが想いを寄せている。ハルカがマヒルの部屋を訪れたとき、すでに異形のモノに変わっていた。

私立麗宝学園高等部3年生(18歳)。心霊研究クラブ〈SDK〉の部長。容姿端麗、才色兼備のスーパー女子高生といった感じ。ハルカとヤヨイが想いを寄せている。ハルカがマヒルの部屋を訪れたとき、すでに異形のモノに変わっていた。

マヒルは、私立れいほう学園高等部の3年生。ヤヨイさんの友だちです。っていうより、ヤヨイが想いを寄せている相手、それがこのマヒルなのです。

ん? ってことは、友だちというより、恋人同士? という疑いもありますが、真相はよくわかりません。

とにかく、容姿端麗で、スタイル抜群。勉強も運動も得意のスーパー女子高生。しかも、ガールズ・バンドのボーカルまでやっている。ヤヨイやハルカだけでなく、もう学校中の憧れのまとってわけです。

───わあああ。

またしても、女たちの悲鳴。でも、今度はくぐもった歓声といった感じ。

「やば。しくじった」

「なに?」

「マヒルのバンドが演奏を始めたんですよ」

「マヒルって……心霊研究クラブの部長の?」

「そういうこと。やつはバンドとかスポーツとかなんでもできるんだ。先生も行こ」

バンドか……。

私は音楽は嫌いじゃないけど、ライブ会場とか、人いきれが苦手。部屋でひとりで聴くのならいいんだけれど……。

「私は、ちょっと用事が……」

「ダメっ! 先生は見なくちゃ」

ヤヨイはそう言いながら、私の手を引っぱって歩きはじめた。足がもつれそうになりながらついていく。生徒がフレンドリーに接してくれるのは嬉しいけど、なんか教師としての威厳がないなあ、これじゃ……。

ヤヨイがめざしているのは音楽室のようだ。教室が近づくにつれ、音が大きくなってくる。ベースの低音が廊下まで漏れていた。

──うわ……なんかうるさそう。

マヒル、ごめん。悪気はないんだ。ただ騒がしいのが苦手なだけ。

ヤヨイが、防音構造になっている分厚い扉を開くと、教室から流れ出てくる音の津波におしながされそうになった。

「先生、早く入って!」ヤヨイが私の背中に手を置き、強引に部屋におしこむ。

音楽室は生徒たちでいっぱいだった。息苦しい。部屋中が少女たちの熱気と大音量の音で満たされ、飽和状態になっている。

自分の長身が幸いし、生徒たちの頭越しに演奏しているコたちの姿が見えた。

──あ! あれは……。 バンドの中央で、ギターを手にしながら、マイクに向かって歌う少女。

──ナツミ!? ……じゃなくて、ナツミに似た少女……。

坂道で会ったあの生徒だ!

その少女の歌声は、マイクを通して増幅されている。けれども、気迫のようなものは直に伝わってきた。体の芯まで響いてきた。

外見だけでなく、もちろん性格もいい。友だちや後輩、誰に対しても優しい。でも、これは人によっては欠点になるのかも。たとえば、ヤヨイにとっては……。

「マヒル、大丈夫?」

背後から声がした。

振りかえるとヤヨイが立っていた。いつになく暗い表情をしている。

まさか、私が撃つのを見ていた?

「大丈夫?」

「うん。ハルカたちは?」

「あっちで待ってる」

「そう。じゃあ、もう平気って言ってくる」

マヒルが駆けだした。

ヤヨイは動かない。私のほうを見ていた。いや、睨んでいた──と私は感じた。

「……なに?」

「マヒルは、素敵な女の子ですよね?」

「……うん」

「あいつは、みんなに対して優しいんです」

これまでのヤヨイのイメージから想像できないほど重い口調だった。

「友だちにも、先輩にも、学校の先生に対しても……」

「……そうだね」

「だから……」

「……?」

「ウチが見守ってあげなくちゃいけないんです。心があちこちに向かないように……」

そう言ってヤヨイは踵を返した。

マヒルが走りさったほうへ早足で歩きだした。

私はそのうしろ姿を見送った。

そのあとを追うことはできなかった。

〈テンシ〉と呼ばれるバケモノに翻弄されながら、少女たちの想いが交錯する──。

『天使の街』はそんな物語なのです。

麗宝学園の人たちに聞いてみよう

──マヒルさんのことをよく知る人にお話を聞こうと思ったのですが、誰にご登場いただくのがいいのか迷ってしまいました。

マヨ それで、全員呼んだってわけね。

──みなさん、お忙しいところ、すみません。さっそくですが、マヒルさんはどんな女の子なのか、教えてください。

ハルカ ……。

サキ ……。

ヤヨイ ……。

マヨ おい、みんなどうした?

ヤヨイ いやあ、先生を差し置いて、ウチらが話をしていいのかなあ……。

──ここでは自由にお話してくださって結構ですよ。じゃあ、年齢順にお聞きしますか?

マヨ ってことは私か……えっと、マヒルはナツミに似てたんだよね。

ヤヨイ 先生の昔の恋人。

サキ ひゅう〜♪

マヨ そういうのいいから……でも、ふたりの性格はまったくちがってて、ナツミはお堅い感じだけど、マヒルはもっとやわらかいというか、エネルギッシュなんだけど穏やかなんだよね。

サキ そうですねぇ。ボクたち後輩のことも気遣ってくれますし、雲の上の人なんだけど、お高くとまっているわけじゃないので、話しかけやすいですよねぇ。

──ヤヨイさんはどう思いますか?

ヤヨイ うん。あいつが怒ったとこはウチも見たことない……でも、あいつは小さいころからけっこう苦労していて、だから心が強くなったんだと思う。

「マヨセンセイって、お堅い人だと思ってた」

「……?」

「でも、愛にあふれている人だと思った」

「……どうして?」

「センセイ、さっき涙を流してたでしょ?」

顔が一瞬にして熱くなった。やっぱり見られてた!? 「涙ってね、愛があるから流れるんだよ。愛がなければ泣いたりしない」

なんとなくうさん臭い言葉かもしれない。突拍子もないことをマヒルは言っているのかもしれない。

でも、そのときの私の心にすうっと沁みこんでいった。

「あたしもずっと泣いてばかりだった。なんでこんなに哀しいんだろうって、ずっと考えてた」

「なにか辛いことでもあったの?」

「いや……人は哀しいとか辛いから泣くんじゃない。愛を感じているから泣くんだってわかったんだ」

ヤヨイ ハルカは? おまえもなにかあるだろ?

ハルカ あの、その、マヒルさんのことは、なんかうまく話せなくて、言葉にするのが難しいっていうか……。

サキ センパイ、緊張しないでくださいよぉ。

ヤヨイ 緊張するなって言われたら、よけいに緊張するだろ。

マヨ まあ、とにかく、マヒルの悪い評判は聞いたことないね。私が知らないだけかもしれないけど。

ハルカ はい。先輩も後輩も、この学校でマヒルさんの悪口を言う人はいません!

──ほんとにこの場にお越しいただけないのが残念……あ、これは失礼しました……。

マヨ 気にするな。このコたちは、気持ちの整理はついているから。もちろん、私もね。

mahiru

PAGE TOP