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	<title>敵情視察 &#8211; 『天使の街』official site</title>
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	<description>『天使の街』シリーズの世界にもっと浸りたいあなたに</description>
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	<title>敵情視察 &#8211; 『天使の街』official site</title>
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	<item>
		<title>【敵情視察】水瀬ハルキ『銀幕の声』から正しい娯楽作品の作り方を学ぶ</title>
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		<dc:creator><![CDATA[夜見野レイ（Gyahun工房）]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 22 Nov 2015 22:00:38 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[敵情視察]]></category>
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					<description><![CDATA[映画を観ていると、スクリーンの端に少女の姿が映る。映画の筋には関係がなく、あまりに不自然。それもそのはず。それはこの映画館で命を落とした少女の亡霊だったからだ。そして、少女を見た者は、やがて奇怪な自殺を遂げるのだった── [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">映画を観ていると、スクリーンの端に少女の姿が映る。映画の筋には関係がなく、あまりに不自然。それもそのはず。それはこの映画館で命を落とした少女の亡霊だったからだ。そして、少女を見た者は、やがて奇怪な自殺を遂げるのだった──。</p>



<p class="wp-block-paragraph">水瀬ハルキ氏の<strong>『銀幕の声』</strong>は、そんなストーリーの「スピリチュアルミステリー」だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">主人公の高校生が少女の霊に惑わされる──。その部分は、なんとなく私の書いている小説と重なる。大変よろしくない。自分より上手く書かれた日にゃ、とても困る。まさに好敵手（ライバル）ってわけだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">逆に考えると、この本の魅力的な部分を自分の小説に取り込むことで、誰もが楽しめる作品にできるのではないか。そんな予感がある。</p>



<p class="wp-block-paragraph">今回は、これまで以上に〈敵情視察〉に力を入れねばなるまい。</p>



<p class="well"><span class="cap"><small>この記事は<a href="https://gyahunkoubou.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ぎゃふん工房の作品レビュー</a>から移植したものです。</small></span></p>



<h2 class="wp-block-heading">物語の舞台を劇的な空間に設定する</h2>



<p class="wp-block-paragraph">本作の主な舞台は〈映画館〉。この設定がまず秀逸。その理由はこうだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そもそも、われわれにとって〈映画館〉とは？　自分たちの住む街にある身近な施設だ。例えば、ファンタジー小説における異世界などとは違う。読者にもその勝手がよくわかるので、ほどよいリアリティーがある。</p>



<p class="wp-block-paragraph">その一方で、〈映画館〉は非日常的な空間でもある。文字どおり劇的な出来事が起こる場所だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">本作では、映写室やスタッフルームのようなスクリーンの裏側も重要な舞台になる。部屋の構造や使われ方などが描写されるが、事実にもとづくものなのか、あるいは作者の創作なのかはわからない。また、作品にとってはどちらであっても問題ではない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">重要なのは「ほどよいリアリティーがある」場所で、「劇的な出来事が起こる」ということだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">事実の中に適度にフィクションを混ぜながら作品世界を構築する。そうすることで、幽霊が登場するという、いわば非現実的な話であっても、地に足が着いたようになる。そんな安定感が本作にもたらされているわけだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">正か負の方向に読者の心を揺り動かす</h2>



<p class="wp-block-paragraph">本作は「スピリチュアルミステリー」となっている。しかし、幽霊によって登場人物が殺されていく話だから、むしろ「ホラー」と呼ぶほうがふさわしい。作中でも、あの『リング』に触れていることから、作者はホラーに造詣が深いとも思われる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">とはいえ、作者は本作を「ホラー」と表現するのをあえて避けたのかもしれない。となると、「ホラー」と呼ぶのは“営業妨害”になってしまうが、これも読者の特権としてお許しいただきたい。</p>



<p class="wp-block-paragraph">では、ホラーの魅力とは何か。それは、激しく心が揺さぶられること。いわゆる“お涙頂戴”の作品でも「心が揺さぶられる」わけだが、ホラーの場合は、恐怖・戦慄・緊張と、あくまでマイナス方向に心が突き動かされる。でも、プラスだろうがマイナスであろうが、それは貴重な読書体験となる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">われわれが読書をする目的のひとつが、日常生活では味わえない“体験”をすることならば、読者の心を揺り動かす仕掛けをほどこすことは重要だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そんな心の揺らぎも本作の魅力のひとつとなっている。</p>



<h2 class="wp-block-heading">オーソドックスな部分を作っておく</h2>



<p class="wp-block-paragraph">本作は、「映像に映る幽霊が呪いをかける」という話だ。一般的には奇妙な物語ではある。しかし、ホラーとしては、それこそ『リング』という作品があるだけに、きわめてオーソドックスなものだ。いや、むしろ王道。</p>



<p class="wp-block-paragraph">この「オーソドックス」とか「王道」こそが、本作を読み解くキーワードなのではないか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">だから、本作を「ホラー」に分類するかどうかは、じつはどうでもよいのかもしれない。「スピリチュアルミステリー」とあるように、本作にはミステリー、さらにサスペンスの要素も含まれているからだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">すなわち「少女はいったいどこに消えてしまったのか」という謎を追究する部分がミステリー、「愛しい人が命を落とす前に少女の呪いを解く」ために主人公が奮闘するところがサスペンスになっている。</p>



<p class="wp-block-paragraph">本作は、ホラーの部分を前述のようにあえてありふれたものにしつつ、ミステリーやサスペンスの部分にオリジナリティーを加えている。「幽霊が出てきて怖いだろ？」とただ読者を怖がらせることを目的にはしていないので、ミステリーやサスペンスの部分がより引き立っているのだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さらに、注目すべきなのは、作品の通奏低音として流れているもの。それは、主人公が家族を想う心。自分にとって大切な人を助けようとする気持ち。そんな、本作の主人公を突き動かしている情動──。</p>



<p class="wp-block-paragraph">言葉で表現しようとすれば、陳腐になってしまう。しかし、そんな「オーソドックス」で「王道」の趣（おもむき）を作品に持たせることで、門戸が広がり、より多くの読者が楽しめる作品に仕上がっているわけだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">物語は三幕で展開させる</h2>



<p class="wp-block-paragraph">本作は、（上）（中）（下）の３巻で構成されている。物語を三幕で展開させるのは、娯楽作品を作る際の常套手段だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">別の本の文章で恐縮だが、引用してみよう。</p>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph">文春の人「短いストーリーが第一幕、第二幕、第三幕という三つの幕に分けて書いてありますが、これはどういうことです」<br>伊丹「これは教科書通りですよ」<br>文春の人「教科書？」<br>伊丹「ハリウッド映画の商売映画は九十九パーセントこうやって書かれてるということです」<br>文春の人「つまり定型ということですか？」<br>伊丹「定型です。アメリカ人はストラクチャーといいますがね。［……中略……］そういう〈上手なお話の話し方〉の長年の蓄積が今のところこの〈三幕物〉というストラクチャーに落ち着いているということじゃないでしょうか。三幕物というのは各幕にそれぞれクライマックがあり、中でも三幕目のクライマックスは映画全体のクライマックスにもなっていてストーリー全体がここで盛りあがってすべてが解決する」<br>［……中略……］<br>文春の人「で、アメリカ映画は九十九パーセント定型である、と」<br>伊丹「アメリカ人は型との戦いはやめちゃったのね。型は一定でよい、と。料理でいえば、オードブルがあって、スープが出て、肉料理があってデザートが出るんだと。コースでは俺は悩まないんだ、と。そのかわり、出す料理は一と皿一と皿見たこともない料理を出すぞ、というのがアメリカ映画における創造性のあり方だね」</p>



<p class="has-text-align-right wp-block-paragraph">伊丹十三『「大病人」日記』（文藝春秋）</p>
</blockquote>



<p class="wp-block-paragraph">ここで述べられているのは、映画（の脚本）の作り方であるが、娯楽作品全般、つまり小説にも応用できる考え方だと思う。</p>



<p class="wp-block-paragraph">本作が３つに分かれているのは、セルフ・パブリッシングのマーケティング戦略によるものかもしれない。しかし、各章のタイトルに「序」「破」「急」と付記されているのを見ると、作者はこのセオリーを意識していたのではないかと勝手に想像する。</p>



<p class="wp-block-paragraph">いずれにせよ、本作はハリウッド映画と同じような物語のカタチを持っているのだから、老若男女にとって読みやすく親しみやすいわけだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">作品世界を広げる工夫をほどこす</h2>



<p class="wp-block-paragraph">本作には、下のようなブックトレイラーが制作されている。私も同じようなことをやっており、ここでも好敵手として本作が目の前に立ちはだかる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">作品からの引用文や、イメージ映像、BGMで構成され、読者の想像力を駆り立てるつくり。作者自身が手がけているものだから、作品のエッセンスが過不足なく表現されている。</p>



<p class="wp-block-paragraph">当ブログは残念ながら読後にこのトレイラーを鑑賞したので、これで本を読みたくなったわけではないのだが、しかし、作品世界により深く浸る手助けにはなってくれた。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これもブックトレイラーのひとつの「定型」として参考になる。</p>


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<h2 class="wp-block-heading">セルフ・パブリッシングだからこそ定型にはめる</h2>



<p class="wp-block-paragraph">セルフ・パブリッシングの小説は、作者の書きたいことだけをひたすら追求するのが醍醐味。そんな先入観があった。自分の好きなようにやり、それに共感できた一部の読者だけが楽しめればいい、と。</p>



<p class="wp-block-paragraph">セルフ・パブリッシングに対する考え方は、作り手・読み手によってさまざまだから、これが正解といえるものはない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ただ、本作『銀幕の声』を読むと、娯楽作品の〈定型〉や〈セオリー〉を意識することも重要なのではないか。そんなことを考えさせられた。</p>



<div class="wp-block-snow-monkey-blocks-btn-box smb-btn-box is-style-default" style="--smb-btn-box--background-color:#e5e5e5"><div class="c-container"><div class="smb-btn-box__lede">銀幕の声（上） (陽水樹文庫)</div><div class="smb-btn-box__btn-wrapper"><a class="smb-btn smb-btn--wider" href="https://www.amazon.co.jp/dp/B015L78HAQ/" style="--smb-btn--background-color:#ff9900;--smb-btn--border-radius:10px;--smb-btn--color:#000000" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="smb-btn__label">Amazon</span></a></div><div class="smb-btn-box__note">水瀬ハルキ</div></div></div>
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			</item>
		<item>
		<title>【敵情視察】アヲイ『無責任姉妹』は無責任だから誰も傷つかない</title>
		<link>https://tensi-no-match.info/musekinin.html</link>
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		<dc:creator><![CDATA[夜見野レイ（Gyahun工房）]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 01 Nov 2015 22:00:27 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[敵情視察]]></category>
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					<description><![CDATA[〈敵情視察〉は、セルフ・パブリッシングの本を読み、「なぜ面白いのか」を考察して、美味しい部分を自分の作品に取り込んでしまおうという邪悪な意図を持った企画だ。 今回は、アヲイ氏の『無責任姉妹』シリーズを俎上にのせてみたい。 [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">〈敵情視察〉は、セルフ・パブリッシングの本を読み、「なぜ面白いのか」を考察して、美味しい部分を自分の作品に取り込んでしまおうという邪悪な意図を持った企画だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">今回は、アヲイ氏の『<strong>無責任姉妹</strong>』シリーズを俎上にのせてみたい。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ライトノベルによくある学園モノかと思って読み進めていると、「ん？ これは……!?」と、予想と違う展開──いや、味わいに驚かされる。そして、それこそが、本シリーズの魅力だと気づく。</p>



<p class="wp-block-paragraph">なお、ここで取り上げるのは『<strong>１ 漆田琴香、煩悶ス。</strong>』と『<strong>２: 漆田風奈、逆上ス。</strong>』の２作。『１』だけでは物語は完結せず、事の顛末を見届けるには、『２』も読む必要がある。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それでは、本シリーズの注目ポイントを挙げていこう。</p>



<p class="well"><span class="cap"><small>この記事は<a href="https://gyahunkoubou.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ぎゃふん工房の作品レビュー</a>から移植したものです。</small></span></p>



<h2 class="wp-block-heading">高校の生徒会長選挙は人生の一大事ではない</h2>



<p class="wp-block-paragraph">舞台は、生徒総数2400人を誇るマンモス高校。ここで行なわれる生徒会長選挙で騒動が巻き起こるというストーリーだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">登場人物は、再選を目指す現・生徒会長に、政権奪取を狙う男子生徒。そこに主人公の〈無責任姉妹〉が絡んでくる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それにしても、生徒会長選挙である。国政選挙でさえ無関心の人が多くなっている昨今、いったい何人の生徒が関心を持つだろうか。実際、本シリーズでもほとんどの生徒が興味を示していない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">主人公たちにとっては、もちろん目下の関心事ではあるが、人生を賭けるほどのものでもない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">つまり、本シリーズで扱っている“事件”は、もともと誰にとっても“どーでもいいこと”なのだ。そこに本シリーズのおかしみが潜んでいる。</p>



<h2 class="wp-block-heading">にもかかわらず大人顔負けのはかりごと</h2>



<p class="wp-block-paragraph">そんな生徒会長選挙において、大人顔負けの謀略・陰謀・根回し・裏工作がはびこる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そう。それは、まるで企業小説を読んでいるかのよう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もっとも、企業小説であれば、登場人物は“大人”であるから、出世のために他人を蹴落とすこともしよう。手柄を立てるために裏工作もしよう。誇張して表現されることはあっても、等身大ではあるわけだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ところが、たかが高校の生徒会長選挙で“泥沼の抗争”。セリフや描写が、いちいちオーバー。そこにミスマッチの妙が生まれているのだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">しょせんは学校のイベントだから誰も傷つかない</h2>



<p class="wp-block-paragraph">もし、これが企業小説ならば、主人公たちのはかりごとによって、失脚したり職を追われたり堀の向こう側に落ちたりと、何らかの不幸が訪れるだろう。人生を狂わされる者もいるかもしれない。主人公の勝利は、敵の敗北だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">だが、生徒会長選挙は、そもそも誰にとっても人生に影響するものではない。誰が“勝利”しても、傷つく者などいない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">物語がどんな結末を迎えようと、後味は悪くならないわけだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">コメディだからこそ作者は笑わない</h2>



<p class="wp-block-paragraph">本シリーズは、生徒会長選挙という“戯れ言”に謀略をめぐらすという“茶番”を描いている。</p>



<p class="wp-block-paragraph">にもかかわらず、語り口はきわめて硬派だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もし、馬鹿馬鹿しい話だからと、文体まで軽薄なものにしてしまえば、読者は逆に冷える。興が削がれること甚だしい。</p>



<p class="wp-block-paragraph">物語がおもしろおかしいものであるからこそ、作者はけっして笑ってはならない。本シリーズは、この鉄則を誠実に守っている。</p>



<p class="wp-block-paragraph">また、本シリーズの主人公は女子高生の姉妹で、いちおう美少女と説明されている（表紙のイラストもそのように描かれている）。ところが、意外にも（というのも変だが）恋愛要素がほとんどない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">だからこそ、登場人物のドタバタぶりがより引き立つのだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">やはりキャラクターが魅力的なのが大前提</h2>



<p class="wp-block-paragraph">これまで挙げてきた要素は、やはり登場キャラクターたちに魅力があるからこそ活きている。</p>



<p class="wp-block-paragraph">〈無責任姉妹〉は、その名のとおり「無責任」。では、まわりがまともかというと、そういう人物は出てこない（教師も含めて）。</p>



<p class="wp-block-paragraph">いわゆる“ツッコミ役”が不在であり、騒動に収拾がつかなくなるのが本シリーズの見どころといえる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">とはいっても、それは高校の中で起こるひとつのイザコザにすぎない。主人公が成長するとか、世界が変わるとかいう話ではない。明日からは、また同じ日常が繰り返されていくのだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">逆にいえば、いつ同じような騒動が巻き起こってもおかしくないわけだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">本シリーズは続編も予定されているようだが、今度はどんなドタバタが起こるのか楽しみだ。</p>
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		<item>
		<title>【敵情視察】初瀬明生『ヴィランズ：悪役たちの物語』の真の主人公は誰だったのか？</title>
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		<dc:creator><![CDATA[夜見野レイ（Gyahun工房）]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 25 Oct 2015 22:00:30 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[敵情視察]]></category>
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					<description><![CDATA[セルフ・パブリッシングでリリースされた本の魅力を分析し、自分の作品に役立てる〈敵情視察〉シリーズ。今回の“ターゲット”は、初瀬明生氏の『ヴィランズ：悪役たちの物語』だ。 セルフ・パブリッシングにしては（といってはナンだが [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">セルフ・パブリッシングでリリースされた本の魅力を分析し、自分の作品に役立てる〈敵情視察〉シリーズ。今回の“ターゲット”は、初瀬明生氏の『<strong>ヴィランズ：悪役たちの物語</strong>』だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">セルフ・パブリッシングにしては（といってはナンだが）、かなりの長編だ。「もうそろそろ終わりかな？」と、読書の進み具合を確かめると「まだ30%……だと!?」。</p>



<p class="wp-block-paragraph">初めは「セルフ・パブリッシングだから、書きたいことをひたすら詰め込んで、こんなに長くなってしまったのかな？」と思った。自分も自称・小説家として気持ちは理解できる。でも、読者として満足できるか不安はあった。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかしながら──。</p>



<p class="wp-block-paragraph">読み終わってみると、原稿用紙650枚の大ボリュームには、きちんと理由があったことがわかる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">途中で飽きることなく最後まで読み通せたのは、作品として、しっかり完成しているからに違いない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そんな本作の魅力を“スパイ”していこう。</p>



<p class="well"><span class="cap"><small>この記事は<a href="https://gyahunkoubou.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ぎゃふん工房の作品レビュー</a>から移植したものです。</small></span></p>



<h2 class="wp-block-heading">［内容］超複雑系ファンタジー＆ミステリー</h2>



<p class="wp-block-paragraph">本作はどんな内容の小説なのか。できるだけ簡単に説明していこう。</p>



<h3 class="wp-block-heading">作り込まれた世界観</h3>



<p class="wp-block-paragraph">高校生のニーアは、新進気鋭の小説家。彼女は特殊な能力を持っている。自分が作り出した物語の世界に入り込み、キャラクターたちとコミュニケーションをとることができるのだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">キャラクターたちは、ニーアの作るストーリーに合わせて、小説の登場人物を演じる（外見もCGのようなもので変えられる）。そうすることで、作品が出来上がっていく。</p>



<p class="wp-block-paragraph">あくまで“役者”として振る舞っているだけだから、魔女や悪魔、吸血鬼などと呼ばれる者たちも、実際に何か悪さをするわけではない。むしろ、どちらかといえば彼女らは善人。それどころか、自分たちの世界でじつに平和に暮らしているのだった。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ようするに、本作では３つの虚構世界が存在している。</p>



<ol class="wp-block-list">
<li>ニーアが女子高生・小説家として生きる世界</li>



<li>キャラクターたちが暮らす世界</li>



<li>キャラクターたちが小説の登場人物として活躍する世界</li>
</ol>



<h3 class="wp-block-heading">謎をはらむ物語</h3>



<p class="wp-block-paragraph">では、このように入り組んだ世界でどんなストーリーが展開するのか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">今度のニーアの新作は、呪いがかけられてしまった国の話。キャラクターたちは小説の登場人物として、その国の城に赴く。誰が呪いをかけたのか、どうすれば呪いが解けるのか。王様から依頼を受け、謎の解明に奮闘することになる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">魔力を持つモンスターが登場し、キャタクターたちも魔法で応戦（モンスターや魔法もCGで表現される）。つまり、ニーアの小説はライトノベルのようなファンタジーというわけだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">今回、ニーアは新たな試みを行なうという。キャラクターたちに小説の役を演じさせるのではなく、それぞれを本人役として作品に登場させるらしい。</p>



<p class="wp-block-paragraph">従来は、きちんとシナリオが用意され、シーンごとに段取りを打ち合わせしながら作品づくりが進められていた（まさしく映画を撮影する要領だ）。でも、今回は台本がなく、キャラクターたちにも小説の詳細がわからない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">なぜそんなことをするのか。ニーアは何かを企んでいるようだが、真意は教えてくれない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">腑に落ちない想いを抱えながらも、キャラクターたちは、小説の登場人物になりきろうとするのだった。</p>



<h2 class="wp-block-heading">［見どころ］複雑な世界と物語で酩酊感に浸る</h2>



<h3 class="wp-block-heading">原稿用紙650枚の理由</h3>



<p class="wp-block-paragraph">本作の世界観と物語をかなり単純化して──いや、乱暴に説明してきたわけだが、それでもこれだけの文字量を必要とした。なお、小説ではこの世界のしくみが懇切丁寧に説明されるので、理解できないということはない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さて、冒頭で「原稿用紙650枚の大ボリュームには、きちんと理由があった」と述べた。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「なるほど、この複雑きわまりない世界観をきちんと説明するために、かなりの枚数を要したのだな」と早合点する人もいるかもしれない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">違うのである。</p>



<p class="wp-block-paragraph">本作がここまで大長編になった理由。それは、前述の〈２〉の世界、〈３〉の世界それぞれで〈謎〉が設定されているからだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">単純にいえば、呪いを解くこと（〈３〉の謎）と、ニーアの真意を知ること（〈２〉の謎）。この２つが解決しなければ本作は完結しないわけだ。異なる２つの小説が合体しているようなものだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">あろうことか、呪いの謎解きには、本格的な密室トリックが関係してくる。この部分だけでも、ちょっとした推理小説１作分の要素が詰め込まれている。</p>



<p class="wp-block-paragraph">表紙のイラストのイメージから、少し変わった生ぬるいファンタジーかと思って油断しながら読んでいると、とんだしっぺ返しを食らうことになるのだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">とはいうものの、ただ２つの物語をくっつけて「こんなに趣向を凝らした作品を書き上げました」と作者がドヤ顏するようであれば、感心することはあっても、興は削がれてしまうだろう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">だが、本作はそのような愚を犯していない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">大切なのは、凝りに凝りまくった世界と物語で、読者は何を得られるかだ。</p>



<h3 class="wp-block-heading">やがて2つの虚構世界が混ざり合う</h3>



<p class="wp-block-paragraph">そもそも、キャラクターたちが素のままを“演じる”というのが厄介だ。たとえば「魔女が天使の役をやっている」というだけなら、「さっきは〈２〉の世界だから魔女本人、いまは〈３〉だから天使として行動しているのだな」というように、そのつど頭を切り替えて読んでいける。</p>



<p class="wp-block-paragraph">だが、「〈２〉でも〈３〉でも魔女は魔女（しかも善人）」となると、何が何やらわからなくなってくる。読み進めるうちに、読者の頭の中で〈２〉と〈３〉の虚構世界が融合し始めてしまうのだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">あえて２つの虚構世界を混ぜ合わせ、読者を混乱に陥れる──これは、本作の狙いのひとつなのではないか。そう勝手に深読みする。</p>



<h3 class="wp-block-heading">視点の切り替えがさらに混乱を招く</h3>



<p class="wp-block-paragraph">本作が「読者の混乱」を企んでいるのではないかと感じさせる理由は、ほかにもある。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは、視点の切り替えだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">本作は基本的にキャラクターのひとりである魔女の視点から描かれる。しかし、ときどき吸血鬼に語り手が変わる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ただでさえ込み入った世界で、視点まで移り変わっては、よけいに読者は戸惑う。賢明な書き手なら、特別な事情がない限り、こんなことはしないだろう。つまり、作者は意図的にやっているわけだ。</p>



<h3 class="wp-block-heading">読者のロジカルな思考を破壊する</h3>



<p class="wp-block-paragraph">このように、小説としてある種の“読みやすさ”や“わかりやすさ”を犠牲にしてまで読者を惑わせようとするのはなぜか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは、読者の合理的な思考力、冷静な判断力を弱めるためではないか、と想像する。</p>



<p class="wp-block-paragraph">たとえるなら、お酒を飲んでホロ酔い気分になっている状態。軽い多幸感やちょっとした酩酊感のようなものを読者に与える。それを意図しているのではないか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、それによってさまざまな効果がもたらされていると思う。</p>



<h4 class="wp-block-heading">［効果その1］テンプレの白々さを拭い去る</h4>



<p class="wp-block-paragraph">先に「ニーアの小説はライトノベルのようなファンタジー」だと述べた。つまり、〈３〉の世界では、大迫力のアクション、激しい魔法のバトルシーンが展開する。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これらは、CGのような“特撮”で実現されているわけだが、読んでいる者には、CGなのか実写なのかは区別がつかない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">つまり、ファンタジー作品ならではのダイナミズムを味わえるというわけだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">一方で、その手の小説は巷にゴマンとある。売れ筋ではあるが、それだけに目新しさはなく、いささか食傷気味だったりもする。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ところが、“酔った頭”で読んでいると「あれ？　これって（作中の）現実だっけ？　虚構だっけ？　どっちだっけ？」と、目の前の光景に１枚フィルターがかかったようになる。ありふれたシーンも読者の目には新鮮なものに映る。</p>



<p class="wp-block-paragraph">いわゆるラノベの“テンプレ”のような物語を展開させながら、その白々しさを拭い去る。そんな効果が生まれるわけだ。</p>



<h4 class="wp-block-heading">［効果その２］読者をミスリードさせる</h4>



<p class="wp-block-paragraph">もうひとつ、読者をミスリードさせる、という効果もある（こちらのほうがより重要かもしれない）。</p>



<p class="wp-block-paragraph">先にチラッと触れたように、本作は本格ミステリーの様相を呈している。簡単にネタが割れてしまっては面白くない。うまく読者を煙に巻き、“犯人”を想像させながらも、最後にいい意味で裏切り、カタルシスを与える。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そんなミステリーの醍醐味を“酩酊感”によって実現しているのだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">いまから思えば、「特別な事情がない限り」やらないはずの〈視点の切り替え〉も、じつはミステリー的なトリックの伏線になっているのだった。</p>



<h3 class="wp-block-heading">あの感情は偽りだったのか？</h3>



<p class="wp-block-paragraph">少し横道にそれるが、個人的には欠点だとは思わないものの、読者の中には気になる人がいるかもしれない。あえて、そんな部分を挙げてみよう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">〈3〉の世界は、ニーアの世界で読まれる小説だから、登場人物の心情も描かれる。バトルシーンがCGで表現されるのはかまわないが（読んでいる者には区別がつかないので）、登場人物が抱いた喜びや悲しみ、怒りなども所詮は“つくりごと”ということになり、虚しさを感じてしまう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もし、読者が登場人物に共感し、同じ感情を抱いたとすれば、梯子がはずされた気分になってしまうかもしれない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">逆に言えば、登場人物たちの過酷な運命に、なんともやり切れない想いを抱いたとしても、「あ、そうか。これはフィクションだった」と思えば、さわやかな気持ちで本を閉じることができる。読後感が悪いものにならないわけだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">［まとめ］本当の“主人公”は誰？</h2>



<h3 class="wp-block-heading">ニーアの能力は特殊ではない</h3>



<p class="wp-block-paragraph">先ほど、ニーアは「特殊な能力を持っている」と説明した。だが、ここでふと思う。はたしてこれは特殊なのか？　小説を書いている者ならば誰でも「自分が作り出した物語の世界に入り込み、キャラクターたちとコミュニケーションをとることができる」のではないだろうか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">キャラクターたちが物語の真相を教えてくれたり、ストーリーの進め方に頭を悩ませているときに「どうしましょう？」と相談すると「わたしに任せてください」と言ってなんとかしてくれたり。自分自身、そんな経験がある。</p>



<p class="wp-block-paragraph">だから、小説家・ニーアについて特筆すべきなのは別の点だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">売れ筋のテンプレに頼らず、むしろそれを破壊すべく、新しい試みに果敢に挑戦したこと。当ブログはそこに注目する。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これは、小説を書く者──いや、モノづくりをする者は、決して忘れてはならぬ創作姿勢だ。しかも、単に「挑戦した」だけでなく、きちんと作品として完成させた。そこが評価に値するわけだ。</p>



<h3 class="wp-block-heading">本作の真の主人公は……</h3>



<p class="wp-block-paragraph">最後に、本作の主人公は誰だったのかという問題を考えたい。</p>



<p class="wp-block-paragraph">真っ先に思い浮かぶのが、表紙にも大きく描かれているニーアだ。なんといっても、世界の創造主である。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ただ、実際に物語を語っているのは魔女だ。むしろこちらが主人公といったほうがしっくりくる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ここで、本作で描かれている３つの虚構世界を思い出してみよう。</p>



<ol class="wp-block-list">
<li>ニーアが女子高生・小説家として生きる世界</li>



<li>キャラクターたちが暮らす世界</li>



<li>キャラクターたちが小説の登場人物として活躍する世界</li>
</ol>



<p class="wp-block-paragraph">すなわち、〈１〉もわれわれにとっては虚構なのだ。では、〈１〉の世界を作ったのは誰か。言うまでもなく、本作の作者（初瀬氏）だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">世界の創造主や物語の語り手を「主人公」と考えるなら、本作のそれは初瀬氏ということになる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、先に述べたニーアの小説家としての卓越性は、そのまま本作の作者にも当てはまる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">繰り返そう。</p>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph">売れ筋のテンプレに頼らず、むしろそれを破壊すべく、新しい試みに果敢に挑戦したこと。当ブログはそこに注目する。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これは、小説を書く者──いや、モノづくりをする者は、決して忘れてはならぬ創作姿勢だ。しかも、単に「挑戦した」だけでなく、きちんと作品として完成させた。そこが評価に値するわけだ。</p>
</blockquote>



<p class="wp-block-paragraph">これは、本作『ヴィランズ：悪役たちの物語』に対する当ブログの感想にもなる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さて、ニーアは自分自身も虚構世界の住人であることを認識しているのだろうか？</p>



<div class="wp-block-snow-monkey-blocks-btn-box smb-btn-box is-style-default" style="--smb-btn-box--background-color:#e5e5e5"><div class="c-container"><div class="smb-btn-box__lede">ヴィランズ: 悪役たちの物語</div><div class="smb-btn-box__btn-wrapper"><a class="smb-btn smb-btn--wider" href="https://www.amazon.co.jp/dp/B015G748YU/" style="--smb-btn--background-color:#ff9900;--smb-btn--border-radius:10px;--smb-btn--color:#000000" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="smb-btn__label">Amazon</span></a></div><div class="smb-btn-box__note">初瀬明生</div></div></div>
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		<title>【敵情視察】伊藤なむあひ『少女幻想譚』が〈隙間社電書〉の第１弾だった理由</title>
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		<dc:creator><![CDATA[夜見野レイ（Gyahun工房）]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 12 Oct 2015 22:00:55 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[敵情視察]]></category>
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					<description><![CDATA[〈敵情視察〉は、セルフ・パブリッシングの人気作・話題作から、美味しいところを頂戴し、自分の作品に役立てようと企むシリーズ。今回は、隙間社による電子書籍の第１弾、伊藤なむあひ氏の『少女幻想譚』を取り上げる。 タイトルの字面 [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">〈敵情視察〉は、セルフ・パブリッシングの人気作・話題作から、美味しいところを頂戴し、自分の作品に役立てようと企むシリーズ。今回は、隙間社による電子書籍の第１弾、伊藤なむあひ氏の『少女幻想譚』を取り上げる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">タイトルの字面から、「少女が幻想的な出来事に遭遇する話」が収められているかと想像していた。そんな内容であれば、自分の小説の参考になる。だが、実際に読んでみると少し違うのであった。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして──。</p>



<p class="wp-block-paragraph">なぜ本書が〈隙間社電書〉の第１弾としてリリースされたか。本書の魅力を分析するうちに、その理由もわかってくる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">今回は、隙間社によって施された粋な仕掛けを解き明かしてみよう。</p>



<p class="well"><span class="cap"><small>この記事は<a href="https://gyahunkoubou.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ぎゃふん工房の作品レビュー</a>から移植したものです。</small></span></p>



<h2 class="wp-block-heading">４つの短篇をさっくりレビュー</h2>



<p class="wp-block-paragraph">本書には、“幻想譚”が４編収められている。内容をくわしく書いてしまうと、未読の人の楽しみを奪うことになるので、それぞれをさっくり語っていこう。</p>



<h3 class="wp-block-heading">物語が始まらない「白雪姫前夜」</h3>



<p class="wp-block-paragraph">『小柄な小学生なら一人くらいは入りそうな大きさのトランク』と男の会話から始まる不思議な味わいを持つ話。</p>



<p class="wp-block-paragraph">この『トランク』の正体は最後まで明かされない──といっても、べつに真相が隠されているわけではない。ただ、読む者が自由に解釈し愉しむ余地がある。</p>



<p class="wp-block-paragraph">当ブログは、『トランク』に何も入っていないこと──いや、これから何かが入れられること──に着目する。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、「白雪姫前夜」というタイトル。白雪姫は〈物語〉であり、その「前夜」だから、まだ〈物語〉は書かれていない、ということではなかろうか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">『トランク』のような何かに、これから〈物語〉が入れられる、というわけだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">この作品を読み終えても、なぜかまだお話は始まっていない。狐につままれたような、不思議な感覚に襲われる一編だ。</p>



<h3 class="wp-block-heading">物語が目の前で紡がれる「鏡子ちゃんに、美しい世界」</h3>



<p class="wp-block-paragraph">物語の中にだけ現れる少女・鏡子ちゃんを追う少年の話。</p>



<p class="wp-block-paragraph">鏡子ちゃんが現れたあとには、〈物語〉が紡がれていく。少女に会いたいという少年の気持ちは、お話の続きを知りたいという読者のそれとイコールだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして──。</p>



<p class="wp-block-paragraph">日々、〈物語〉を書こうとする自称・小説家にとって、「鏡子ちゃん」は自分の作品の登場人物のようなもの。同時に、〈物語〉を作り出してくれるパートナーでもある（小説を書いている人なら「キャラクターが勝手に動き話しはじめる」という経験があるだろう）。</p>



<p class="wp-block-paragraph">〈物語〉を読んでいたはずなのに、読者である自分が〈物語〉を作っていた。そんな奇妙な読後感を味わえる。</p>



<h3 class="wp-block-heading">物語が崩壊・再生する「／いいえ、世界です。」</h3>



<p class="wp-block-paragraph">世界から半濁音が消え、少女が探しまわる話。ここでは、シャンプーはシャンフー、パパはハハとなる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">半濁音があるかないか。ほんのちょっとの違いだが、少女の住む世界はやがて崩壊してしまう。そのあとは、〈無〉ではなく新しい世界が作られていく。</p>



<p class="wp-block-paragraph">本作も、前の２編と同様、〈物語〉について描いたものと解釈できる。〈物語〉の破壊と再生を表現しているわけだ。</p>



<h3 class="wp-block-heading">われわれの“知らない”物語「おはなしは夜にだけ」</h3>



<p class="wp-block-paragraph">街のいたるところで『かれら』が現れる話。</p>



<p class="wp-block-paragraph">『かれら』とは何なのか。やはりその詳細が語られることはない。少なくとも人ではないが、モンスターの類というわけでもなさそうだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">『かれら』とは、われわれ読者の知らないもの、まだ見つけていないもの、ではないか。あえて他の３編との関連性を見出すなら、われわれがまだ知らないものとは、これも〈物語〉ということになりそうだ。つまり、われわれはまだ〈物語〉を発見していないのだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">この短編集の魅力とは？</h2>



<h3 class="wp-block-heading">セルフ・パブリッシングならでは自由奔放さ</h3>



<p class="wp-block-paragraph">本書に収められた短編は、既存の小説の枠には当てはまらないものばかりだ。「こう書かなければならない」という既成概念から解放された筆致が清々しい。</p>



<p class="wp-block-paragraph">たとえば、「／いいえ、世界です。」では、ただの言葉遊びと見せかけて、“文字表現”の根源的なおかしみを電子書籍ならではの工夫で表現している（この部分のHTMLファイルがどうなっているかも気になる）。</p>



<h3 class="wp-block-heading">幻想に惑うのは「少女」ではなく読者</h3>



<p class="wp-block-paragraph">本書で展開するのは、最初に想像したような「少女が幻想的な出来事に遭遇する話」ではなく、「読者が少女に惑う話」であった。この「少女」も、人間の女の子というより、〈物語〉の、いや〈世界〉の創造主のような存在だ。</p>



<h3 class="wp-block-heading">物語を作る者／読む者の琴線に触れる</h3>



<p class="wp-block-paragraph">４つの短編は、先に述べたように、それぞれ〈物語〉の創造・破壊・再生を表現している。</p>



<p class="wp-block-paragraph">本来、読書とは、すでに作られた〈物語〉を読むことだ。しかし、本書は読者の目の前で〈物語〉が作られ、壊され、また作りなおされていく。そんな臨場感が味わえるのだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">本書が〈隙間社電書〉の第１弾だった理由</h2>



<p class="wp-block-paragraph">ここで、最初に設定した問題にもどろう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">なぜ本書が〈隙間社電書〉の第１弾としてリリースされたか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは、本書が「〈物語〉とは何か？」という根源的な問いかけを、読む者に投げかけるものだからだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">セルフ・パブリッシングの本を作る者には〈物語〉を創造する喜び、セルフ・パブリッシングの本を読む者には〈物語〉の世界に浸る楽しさ。本書はその基本を伝えようとしているのではないか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">つまり、本書そのものが、これから次々とリリースされるであろう〈隙間社電書〉シリーズの「まえがき」とか「プロローグ」の役割を果たしているのではないか。本書が〈隙間社電書〉の第１弾だった理由はそこにあると想像する。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これこそが、隙間社が施した「粋な仕掛け」というわけだ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ところで、自分の小説の参考にしようと読みはじめた短編集だったが、自分にはこういうものは書けないと思う（書きたいけれど）。</p>



<p class="has-text-align-right wp-block-paragraph"><span style="font-size: 10px;">（文中、一部敬称略）</span></p>
]]></content:encoded>
					
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		<item>
		<title>【敵情視察】〈霊能力者紅倉美姫〉は心霊怪談の王道でありながら……</title>
		<link>https://tensi-no-match.info/benikura-miki.html</link>
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		<dc:creator><![CDATA[夜見野レイ（Gyahun工房）]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 03 Aug 2014 22:00:03 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[敵情視察]]></category>
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					<description><![CDATA[ガールズ・ラブ＆心霊学園ホラーである『天使の街』。この小説の“ライバル”と思われる小説を探し出し、その魅力を分析して、今後の創作活動に活かす。それが【敵情視察】の趣旨です。 今回は、岳石祭人さんの〈霊能力者紅倉美姫〉シリ [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">ガールズ・ラブ＆心霊学園ホラーである『天使の街』。この小説の“ライバル”と思われる小説を探し出し、その魅力を分析して、今後の創作活動に活かす。それが【敵情視察】の趣旨です。</p>



<p class="wp-block-paragraph">今回は、岳石祭人さんの〈霊能力者紅倉美姫〉シリーズ（現在までに５作リリース）をご紹介します。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そもそものきっかけは、岳石さんのブログで『天使の街』に触れていただいているのを見つけたことでした。どんな作品を書かれているかと思い、作品が発表されている「パブー」をチェックすると、これがなんと心霊オカルトホラー。しかも、主人公は美女ふたり。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これは“スパイ”しないわけにはいきませんよね？</p>



<h2 class="wp-block-heading">まずオカルトの王道パターンが展開</h2>



<p class="wp-block-paragraph">少女の身の回りで自殺やケガなどの不幸が相次いで起こる、心霊オカルト番組で心霊写真を鑑定する、心霊スポットであるトンネルを訪れる──。このように、心霊オカルトの王道パターンを踏襲した物語が展開していきます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">この手の話に興味をそそられる私のような人間にとっては、まさにドンピシャの作品。ワクワクを禁じえません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">とはいえ、ありふれた「心霊怪談」に終始するのかといえば、ちょっと違います。</p>



<p class="wp-block-paragraph">典型的な「怖い話」の定型をなぞりながら、終盤になると、ちょっとだけ読者の期待をいい意味で裏切るような展開を見せていきます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">というのは、本作品は「ほんとにあった怖い話」ではなく、あくまでフィクションです。だから、「こんなスゴイこと、現実にはあり得ない」と思ってしまうような展開になってもいいわけです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">実話でないことを逆手にとり、作者の想像力と遊び心が発揮されていく。そこが本作品の“おいしい”部分になっているのです。</p>



<h2 class="wp-block-heading">そしてゲストキャラクターを彫り込み</h2>



<p class="wp-block-paragraph">毎回、オカルト番組への投稿者、霊能力者である主人公への相談者といったゲストキャラクターが登場します。</p>



<p class="wp-block-paragraph">一般的に「心霊怪談」では、こういったゲストは物語のきっかけを提供するだけで、人物像まではくわしく描写されません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、〈霊能力者紅倉美姫〉は、前述のように「実話」ではなく「小説」であるため、ゲストキャラクターの置かれた状況や本人の心情が細かく彫り込まれていきます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">つまり、単なる「怖い話」を演出するためだけにセッティングされたキャラクターではない。人間ドラマを背負った存在であるわけです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">人間味あふれるキャラクターに感情移入できる。そこが、小説としての〈霊能力者紅倉美姫〉の魅力といえます。</p>



<h2 class="wp-block-heading">さらに主人公の美女たちの存在感</h2>



<p class="wp-block-paragraph">〈霊能力者紅倉美姫〉には、霊能力者の紅倉美姫と、彼女のアシスタントをしている女子大生の芙蓉美貴というふたりの美女が登場します。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ただし、人間ドラマを展開させる役目を負っているのは、前述のようにゲストキャラクターです。紅倉美姫と芙蓉美貴は主人公ではありますが、〈狂言回し〉（読者を物語の世界に誘う役）に近い存在です。</p>



<p class="wp-block-paragraph">たとえるなら、テレビドラマ『世にも奇妙な物語』のタモリ、マンガ『アウターゾーン』（光原伸・著）のミザリィといったところでしょうか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ただ、本作で彼女たちは、タモリやミザリィ以上に物語に関与しています。だから、純粋な〈狂言回し〉とも言えません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ゲストキャラクターのドラマと平行して、じつは紅倉美姫と芙蓉美貴のストーリーも進行します。回を追うごとにちょっとずつふたりの謎が明らかになっていく。その趣向もおもしろい部分です。</p>



<h2 class="wp-block-heading">ただし惜しいところも</h2>



<p class="wp-block-paragraph">紅倉美姫と芙蓉美貴というふたりの美女は、どちらも謎めいていて、とても魅力的です。しかし、ふたりとも尋常でない雰囲気を醸しているために、途中でどっちがどっちだか、わからなくなってしまうことがあります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そこがとても惜しい。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ふたりのうち一方は、わかりやすい（ステレオタイプの）キャラのほうがよい気がします。</p>



<p class="wp-block-paragraph">順当にいけば、霊能力者・紅倉美姫が神秘性を帯び、アシスタントの芙蓉美貴は絵に描いたような女子大生──とするところですが、むしろ紅倉美姫のほうを類型的に描き、芙蓉美貴のほうに謎があって、回を増すごとにそれが明らかになっていく、という展開もおもしろいかもしれません（いち読者としての勝手な意見ですが）。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それと、本作品は「パブー」で販売されています（無料作品もあり）。私はePubファイルをダウンロードして拝読しましたが、ファイルは横書きで作成されていました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、本作品のような“重量感”のある語り口の場合、やはり縦書きのほうが適していると思われます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「パブー」には、『天使の街』も出しています。ですから、「パブー」のシステムが縦書きに対応していないことは承知しています。「パブー」で縦書きePubファイルを提供するには、月額料金を払い、自分でファイルを作成して、アップロードする必要があります。セルフ・パブリッシングとしては、少しハードルが高いかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">なので、これもいち読者のわがまま、といえます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さらに、乗りかかった船で勝手なことを申し上げれば、カバー（表紙）のこと。</p>



<p class="wp-block-paragraph">イラストは著者自身の手によるものです。作品のテイストに合っているし、主人公ふたりも魅力的に描かれ、素晴らしいと思います。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それだけにタイトルの文字に、もう一工夫ほしいところです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これはセルフ・パブリッシングの作品が抱える課題でもありますが、せっかくのイラストが生かしきれていない感じがしてしまいます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">いっそのこと、タイトルは手描きにしてしまうのもアリかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><span class="cap"><small>＊我田引水で恐縮ながら、よろしければ<a href="https://tensi-no-match.info/making-of-cover.html" target="_blank" rel="noreferrer noopener">こちら</a>もどうぞ。イラストは著者ご本人が描けるのでプロに頼まなくてもいいと思いますが、それ以外の仕上げの部分をもう一歩踏み込んでいただければもっとよくなるのではと思います。</small></span></p>



<p class="wp-block-paragraph">まあ、それらはともかくとして、「心霊オカルト」の物語展開にはさまざまなバリエーションが考えられます。つまり、ネタは豊富に転がっている。だから、〈霊能力者紅倉美姫〉も息の長いシリーズになりそうな予感があります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">最新作を楽しみに待ちたいと思います。</p>
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		<title>皮算積人『子連れ中年っ！（魔法中年っ！シリーズ2）』を敵情視察します</title>
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					<comments>https://tensi-no-match.info/kodure-tyuunen.html#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[夜見野レイ（Gyahun工房）]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 03 Nov 2013 22:00:56 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[敵情視察]]></category>
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					<description><![CDATA[自分の書いている小説『天使の街』に似ているセルフ・パブリッシングの作品を“敵情視察”するシリーズ。今回は、皮算積人さんの『子連れ中年っ！』です。 以前の“敵情視察”でも取り上げた『魔法中年っ！』の続編。女子高生の日常の世 [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">自分の書いている小説『天使の街』に似ているセルフ・パブリッシングの作品を“敵情視察”するシリーズ。今回は、皮算積人さんの『子連れ中年っ！』です。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><a title="キンドル作家の作品を“敵情視察”してみた" href="https://tensi-no-match.info/ebook-read.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">以前の“敵情視察”</a>でも取り上げた『魔法中年っ！』の続編。女子高生の日常の世界を描きながら、ガールズ・ラブ要素があり、非現実的な描写も入る。『天使の街』にきわめて近い作品ですので、しっかり“スパイ”しなければいけません。</p>



<p class="well"><span class="cap"><small>この記事は<a href="https://gyahunkoubou.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ぎゃふん工房の作品レビュー</a>から移植したものです。</small></span></p>



<h2 class="wp-block-heading">あくまで地に足のついた日常描写にこだわりを見せる</h2>



<p class="wp-block-paragraph">今回は、前作で魔法によって美少女の姿になった中年男が、なぜか幼女を預かることになるというお話。</p>



<p class="wp-block-paragraph">自分は美少女で、魔法使いで、しかも幼女が……という設定なので、いくらでも“ムフフ”な展開に持っていくことが可能なはずです。しかし、前作同様、主人公はきわめて常識人で、インモラルな方向には走らず、（中年男が少女に化けているというただ１点を除き）日常的なシーンが展開してきます。「悪魔」は出てきますが、べつに大量殺戮をするとか、破壊の限りを尽くす、ということはしません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">地に足のついた物語が展開することによって得られるのは、作品としての安定感。作者のひとりよがりで話が進み、読者がおいてきぼりになる、などといった哀しいことは起こらず、きちんとキャラクターに感情移入しながら、ストーリーの行く末を見守ることができます。主人公は、見た目は少女でも中身は“おっさん”なので、その行動や感情にも大いに共感できるのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">では、魔法もバトルも登場しない、日常風景がダラダラ続くだけの退屈な作品なのか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">ただ作者がみずからの世界観に浸りたいだけの、それこそ読者不在の小説であったなら、そうなっていたでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし本作は、読者の胸を躍らせる、いくつかの工夫が施されていました。それを分析してみましょう。</p>



<h2 class="wp-block-heading">作品にしかけられた３つの工夫</h2>



<h3 class="wp-block-heading">【１】ゲームの描写でダイナミズムを確保</h3>



<p class="wp-block-paragraph">主人公は、前作で仲よくなった女友達とオンラインゲームをプレイしています。魔法の応酬によるバトルの描写は（あまり）ありませんが、その代わり、ゲームの戦闘シーンで爽快感を味わうことができます。</p>



<h3 class="wp-block-heading">【２】ちょっとだけミステリー要素を加味</h3>



<p class="wp-block-paragraph">主人公に課せられた使命は、「聖少女」と呼ばれる存在を探り当てること。これがミステリーでいう「フーダニット（真犯人は誰か？）」になり、物語を牽引していきます。ラストには、ちょっとだけどんでん返しもあったりして、小気味よいカタルシスを得ることができます。</p>



<h3 class="wp-block-heading">【３】〈愛〉とは何かの哲学的考察の機会を提供</h3>



<p class="wp-block-paragraph">主人公といっしょに行動している女友達は、主人公に想いを寄せています。しかも、魔法の力で美少女の姿になっている中年男であることも知っているのです。そうすると、「見た目と中身、どっちを好きになっているのか」という、古典的でありながら、しかし永久に答えの出せないテーマが底流に流れています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さらに今回は、子どもを引き取って面倒を見なければいけないのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">自分にとって、幼女はどういう存在なのか？　そして子どもにとって主人公は？　そこに生まれるのはどんな想いなのか……？</p>



<p class="wp-block-paragraph">いわゆる「ラノベ」を装いながら、深い哲学的な考察を余儀なくされる。自分も小説を書いている身だから、しばしば立ち止まり、そして考え込んでしまう。自分にとっては「ライト」ではなく「ヘビー」な作品に思えてくるのでした。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もちろん、そうは言ってもあくまで「ラノベ」ですので、理屈をこねる小難しい作品ではなく、肩ひじ張らずに楽しめる小説であるのは間違いありません。</p>



<h2 class="wp-block-heading">次回作への期待</h2>



<p class="wp-block-paragraph">〈魔法中年〉シリーズは、最初に述べたように、「魔法を使って世界を救う」話ではなく、日常描写に重きを置いた小説なので、いくらでも続編が作れるタイプの作品です（「シリーズ」をうたっているから、続編出ますよね？）。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ところが、前述のように、高度な哲学的テーマを盛り込んでしまったために、続編はこれをさらに推し進めた作品にしなければなりません。もちろん、このテーマを深めた作品でなくても成立はしますし、満足する読者もいるでしょう。でも、それはある種の誤魔化しになってしまう気がします。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もちろん、だからこそ、次回作ではどんな新境地を見せてくるのか。そこが楽しみでもあるわけです。</p>



<div class="wp-block-snow-monkey-blocks-btn-box smb-btn-box is-style-default" style="--smb-btn-box--background-color:#e5e5e5"><div class="c-container"><div class="smb-btn-box__lede">子連れ中年っ！（魔法中年っ！シリーズ2）</div><div class="smb-btn-box__btn-wrapper"><a class="smb-btn smb-btn--wider" href="https://www.amazon.co.jp/dp/B00FSEQVJC/" style="--smb-btn--background-color:#ff9900;--smb-btn--border-radius:10px;--smb-btn--color:#000000" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="smb-btn__label">Amazon</span></a></div><div class="smb-btn-box__note">皮算積人</div></div></div>
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		<title>【敵情視察】狗界ゴウ『緑眼魔女の事件簿 テロリズム・イン・チベット』</title>
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		<dc:creator><![CDATA[夜見野レイ（Gyahun工房）]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 20 Oct 2013 22:00:44 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[敵情視察]]></category>
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					<description><![CDATA[近未来の中国を舞台に、国連治安維持局の特殊捜査官が特殊能力を駆使し奮闘する──。狗界ゴウ『緑眼魔女（グリーンアイズ・ウィッチ）の事件簿 テロリズム・イン・チベット』は、セルフ・パブリッシングで作られたラノベ風の作品。女性 [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">近未来の中国を舞台に、国連治安維持局の特殊捜査官が特殊能力を駆使し奮闘する──。狗界ゴウ『緑眼魔女（グリーンアイズ・ウィッチ）の事件簿 テロリズム・イン・チベット』は、セルフ・パブリッシングで作られたラノベ風の作品。女性キャラクターが主人公であり、非現実的な現象の描写がある。異形のものが登場する。自分の書いている小説と方向性がきわめて似ており、これはスパイしないわけにはいかない。</p>



<p class="wp-block-paragraph">といったわけで、今回は〈敵情視察〉シリーズの第２弾です。</p>



<p class="well"><span class="cap"><small>この記事は<a href="https://gyahunkoubou.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ぎゃふん工房の作品レビュー</a>から移植したものです。</small></span></p>



<h2 class="wp-block-heading">読み物としての恐るべき完成度の高さ</h2>



<p class="wp-block-paragraph">まずは、きわめて可読性が高い──つまり読みやすいのに驚く。セルフ・パブリッシングの小説がとりわけ読みにくいというわけではないのだけど、あとがきに「編集者に手を入れてもらった」とあるとおり、「読みやすい」という方向に磨きがかけられているのがわかる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">文章の運びに淀みがなく洗練され、じつにスムーズに読み進めていける。ストーリー展開にも無駄がなく、過不足なくシーンが配置されている。キャラクターの動かし方もじつに的確。</p>



<p class="wp-block-paragraph">とにかく「欠点」と呼べるものが徹底的に排除されている。その意味で、今まで読んだどのセルフ・パブリッシングの小説より完成度は高い。</p>



<p class="wp-block-paragraph">登場キャラクターたちは特殊な能力を使う。この部分の描写は、ひょっとするとラノベとしては手垢のついたものかもしれないが、個人的には、この手のジャンルを読み慣れていないので、むしろ新鮮さを感じた。</p>



<p class="wp-block-paragraph">近未来の中国が舞台というのも、作品のたたずまいを独特なものにしており、魅力のひとつだ。</p>



<h2 class="wp-block-heading">完成度が高いゆえの読者のわがまま</h2>



<p class="wp-block-paragraph">まったく詰まることなく、最後まで一気に読ませてくれる。それはとても評価すべきなのだけど、それゆえに物足りなさを感じてしまうのも事実。といっても、これはたんなる読者のわがままというやつで、作品の欠点とは次元が異なる。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは、もう少し“ウエット感”がほしかったかな、ということ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">主人公がその特殊能力ゆえに置かれたみずからの境遇、自分が救おうとしている少女に対する憐憫などといったものにもう少し行数を割いてもよかったのではないか、とも思う。といっても、そういったものがまったく描かれていないわけではなく、検討のすえに現状のバランスになっているのだと想像もできる。あとは好みの問題で、個人的には多少バランスを欠いても、そのあたりをじっくりねっとり描いてもよかったのかな、というのが一読者としての勝手な意見だ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">また、近未来の中国が舞台で、その雰囲気も堪能はできるのだけど、どうしても主戦場が秘密基地みたいな場所になってしまうので、もう少し異境の地ならではの描写があってもよかった。もちろん、これも好みの問題ではあるが。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、これは小説本編の完成度が高いからこそだが、表紙のイラストが良質なだけに、タイトル文字の稚拙さがやはり気になってしまう。中身のほうも粗削りであれば、これでもいいのかもしれないが、「セルフ・パブリッシング」の良くない部分がここに現れている感じがして、少し寂しい。ついでにいえば、中の見出しの体裁にも配慮がほしかった。もちろん、細かいことが気になるのは、内容にケチのつけようがないことの裏返しでもある。</p>



<h2 class="wp-block-heading">特設サイトも開設</h2>



<p class="wp-block-paragraph"><a href="http://blog.livedoor.jp/epubzero/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">著書のブログ</a>では、セルフ・パブリッシングに至るまでの道のりが綴られ、非常に参考になる。また、作品の特設サイトも作られていたりして、こういう取り組みは“ライバル”としては見すごせない（できれば、作品世界を深められるよう、もう少しコンテンツを充実させてほしいところではある）。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><a href="http://blog.livedoor.jp/epubzero/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">知識ゼロからのキンドル出版</a></p>



<p class="wp-block-paragraph">『緑眼魔女（グリーンアイズ・ウィッチ）の事件簿 テロリズム・イン・チベット』特設サイト<br>［2024年1月10日追記］現在は閉鎖されてしまったようです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">特設サイトまであるということは、続編も作られるということかな？　今後も注目していきたい。</p>
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		<title>キンドル作家の作品を“敵情視察”してみた</title>
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		<dc:creator><![CDATA[夜見野レイ（Gyahun工房）]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 08 Sep 2013 22:00:32 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[敵情視察]]></category>
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					<description><![CDATA[ガールズ・ラブ＆心霊学園ホラー『天使の街』をAmazon KDPやiBooksにおいてセルフ・パブリッシング（自己出版）で販売しようと企んでおります。では同じようにセルフ・パブリッシングをしている作家さんの作品はどんな感 [&#8230;]]]></description>
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<p class="wp-block-paragraph">ガールズ・ラブ＆心霊学園ホラー『天使の街』をAmazon KDPやiBooksにおいてセルフ・パブリッシング（自己出版）で販売しようと企んでおります。では同じようにセルフ・パブリッシングをしている作家さんの作品はどんな感じなのか。『天使の街』になんとなく方向性が近い気がする本を３冊選び“敵情視察”してみた。</p>



<p class="well"><span class="cap"><small>この記事は<a href="https://gyahunkoubou.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ぎゃふん工房の作品レビュー</a>から移植したものです。</small></span></p>



<h2 class="wp-block-heading">ヘリベマルヲ『Ｐの刺激 &#8211; Punk is UnknowN Kicks -』</h2>



<p class="wp-block-paragraph">若者が主人公で、日常のなかに非現実的な描写が入り込んでくる、という点で『天使の街』と似ている。</p>



<p class="wp-block-paragraph">&nbsp;社会の“危ないところ”を綱渡りで渡っていくような、まさしく“刺激”的な文体が魅力。</p>



<p class="wp-block-paragraph">膨大な情報量が怒濤のように脳に直に流れ込んでくる感覚は電子書籍ならでは。『<a title="藤井太洋『Gene Mapper』を電子書籍入門者に勧める理由" href="https://gyahunkoubou.com/gene-mapper.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">GeneMaaper</a>』にも通じるものがある。</p>



<p class="wp-block-paragraph">あえて、自分の好みを言わせてもらうならば、ときどき切り替わる女主人公からの視点は不要だったのではないか、また“特殊能力”がもっと早く（たとえば冒頭）から登場していればよかったのではないか。そうすれば、もう少しわかりやすくなったのかもしれない。「わかりやすい」のがいいことだとすれば、だけど。</p>



<h2 class="wp-block-heading">日野裕太郎『いつもの夕餉』</h2>



<p class="wp-block-paragraph">日常を舞台にした心霊ホラーという点が『天使の街』と共通する。</p>



<p class="wp-block-paragraph">最後にどんでん返しが待つ短編。ネタは誰もが思いつかなかった画期的なもの、というわけではないが、短編ホラーならでは語り口であっという間にラストまでもっていかれる。「してやられた」感が心地よい。</p>



<div class="wp-block-snow-monkey-blocks-btn-box smb-btn-box is-style-default" style="--smb-btn-box--background-color:#e5e5e5"><div class="c-container"><div class="smb-btn-box__lede">いつもの夕餉</div><div class="smb-btn-box__btn-wrapper"><a class="smb-btn smb-btn--wider" href="https://www.amazon.co.jp/dp/B009XZUVRK/" style="--smb-btn--background-color:#ff9900;--smb-btn--border-radius:10px;--smb-btn--color:#000000" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="smb-btn__label">Amazon</span></a></div><div class="smb-btn-box__note">日野 裕太郎</div></div></div>



<h2 class="wp-block-heading">皮算積人『魔法中年っ！』</h2>



<p class="wp-block-paragraph">女子校が舞台で、ガールズ・ラブ要素が入り、非現実的なシーンも展開するという意味で、今回読んだ３冊のなかで『天使の街』にもっとも近い作品。</p>



<p class="wp-block-paragraph">厳密に言えば、主人公は“おっさん”なので、純粋なガールズ・ラブではない。この設定なら、いくらでもトリッキーな方向性にもっていけるのに、きちんと学園モノのフォーマットに落とし込んでいるのが効いている。</p>



<p class="wp-block-paragraph">娯楽作品としての完成度はきわめて高い。</p>



<div class="wp-block-snow-monkey-blocks-btn-box smb-btn-box is-style-default" style="--smb-btn-box--background-color:#e5e5e5"><div class="c-container"><div class="smb-btn-box__lede">魔法中年っ！</div><div class="smb-btn-box__btn-wrapper"><a class="smb-btn smb-btn--wider" href="https://www.amazon.co.jp/dp/B00C1NBPJO/" style="--smb-btn--background-color:#ff9900;--smb-btn--border-radius:10px;--smb-btn--color:#000000" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="smb-btn__label">Amazon</span></a></div><div class="smb-btn-box__note">皮算積人</div></div></div>



<h2 class="wp-block-heading">傑作はまだまだあるよ</h2>



<p class="wp-block-paragraph">今回はあくまで“敵情視察”としてのご紹介となる。もちろん、セルフ・パブリッシングの作品にはまだまだおもしろいものがそろっている。興味がわいたら、ぜひチェックしてみてほしい。このブログでも引き続き紹介していくつもりだ。</p>
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